■~円形性脱毛症について~
こんにちは!高知市の島崎クリニックの院長島崎です。
突然の円形性脱毛症に気づき、鏡を見てショックを受けている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「なぜ急に髪が抜けてしまったんだろう」「このまま全部抜けてしまうのではないか」といった不安や疑問で、心が休まらないこととお察しします。円形性脱毛症は、命に関わる病気ではありませんが、外見に影響を及ぼすため、精神的な負担が非常に大きい皮膚疾患です。この記事では、円形性脱毛症の原因から最新の治療法、日常の注意点まで、皆様の疑問や悩みを解決するために、皮膚科の専門的な知識と長年の診療経験に基づいた情報を、徹底的に網羅してご紹介します。この記事を読んで、円形性脱毛症の全体像と、今何をすべきかが明確に理解できるはずです。特に、円形性脱毛症で悩むご本人様や、不安を感じているご家族はぜひ最後まで読んでみてください!
円形性脱毛症とは?原因と発症メカニズム
円形性脱毛症は、ある日突然、円形または楕円形に髪の毛が抜けてしまう皮膚疾患です。一般的には「単発型」と呼ばれる一つの脱毛斑ができるケースが多いですが、進行すると頭部全体に広がる「全頭型」や、体毛すべてが抜けてしまう「汎発型」になることもあります。
円形性脱毛症の主な原因は、自己免疫疾患であると考えられています。
自己免疫疾患とは、本来外部からの異物(ウイルスや細菌など)を攻撃して体を守るべき免疫細胞が、なぜか自分の体の一部である毛根の組織を誤って攻撃してしまうことによって発症する病気です。この誤った攻撃によって毛根が破壊され、成長期の途中にあった健康な髪の毛が急に抜けてしまうのです。
この自己免疫反応を引き起こす誘因としては、以下の3つの要素が複雑に絡み合っているとされています。
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遺伝的要因: 家族や親戚に円形性脱毛症の患者がいる場合、そうでない人よりも発症しやすいことがわかっています。特定の遺伝子タイプを持つ人は、免疫細胞が自己攻撃をしやすい傾向があるためです。
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精神的・肉体的ストレス: 過度なストレスや疲労、睡眠不足、病気などが引き金となり、体の免疫バランスが乱れることが多くあります。ストレス自体が直接の原因ではありませんが、発症のきっかけになる、または悪化させる要因となり得ます。
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アトピー素因: アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息といったアトピー性の病気を持つ人やその家族は、円形性脱毛症を併発しやすい傾向があります。アトピー素因がある人は、もともと免疫システムが過剰に働きやすい体質であるためです。
円形性脱毛症は「治る」病気であるという認識が大切
円形性脱毛症は進行性の病気で不安に感じる方も多いですが、適切な治療を受ければ髪の毛が再生する可能性が高い「治る」病気であることをまずご理解ください。特に脱毛斑が小さい単発型の場合、自然治癒することもありますが、自己判断せずに皮膚科専門医による早期の診断と治療開始が、予後を大きく左右します。
円形性脱毛症の重症度分類と診断方法
円形性脱毛症の治療方針を決定する上で、重症度を正確に評価することが極めて重要です。皮膚科では、主に脱毛の範囲と病気の勢いによって重症度を分類し、治療法を選択します。
円形性脱毛症の重症度を評価するSALTスコア
皮膚科の臨床現場や研究では、脱毛の程度を客観的に評価するために「SALTスコア(Severity of Alopecia Tool Score)」という国際的な指標が用いられます。SALTスコアは、頭部の脱毛面積をパーセンテージで示し、**0(脱毛なし)から100(全頭脱毛)**の数値で評価します。
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軽症:SALTスコアが20以下(脱毛が頭部の20%未満)
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中等症:SALTスコアが21~49(脱毛が頭部の21%~49%)
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重症:SALTスコアが50以上(脱毛が頭部の50%以上)
このSALTスコアは、治療の前後で客観的に効果を判定するための重要な基準となります。
皮膚科で行う円形性脱毛症の診断
診断は、主に**視診(目で見て確認する診察)とダーモスコピー(拡大鏡を使った診察)**によって行われます。
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視診と問診: 脱毛斑の形、大きさ、数を確認します。また、いつから、どのような状況で脱毛が始まったか、家族歴やアトピー素因の有無、現在の精神的・肉体的ストレスの状態などを詳しくお伺いします。
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ダーモスコピー: 特殊な拡大鏡(ダーモスコープ)を用いて、脱毛斑の頭皮と毛根の状態を詳細に観察します。「切れ毛」や「黄色い点(イエロードット)」、**「感嘆符毛(かんたんふもう)」**といった円形性脱毛症に特有の所見を確認することで、活動性の有無や診断の確定を行います。
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毛髪牽引試験(ヘア・プル・テスト): 脱毛斑の周囲の髪の毛を軽く引っ張り、簡単に抜けるかどうかを調べます。容易に抜ける場合は、病気が活動期にあり、進行中であると判断されます。
これらの診察により、脂漏性脱毛症や他の脱毛症との鑑別を行い、円形性脱毛症であると診断します。
高知市で受けられる円形性脱毛症の主な治療法
円形性脱毛症の治療は、重症度や発症からの期間、患者様の年齢によって、複数の治療法を組み合わせて行われます。高知市の島崎クリニックでも、最新の知見に基づき、個々の患者様に最適な治療プランをご提案しています。
軽症(SALTスコア20以下)の治療法
軽症の場合は、比較的副作用の少ない外用薬や内服薬から治療を開始することが一般的です。
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ステロイド外用薬: 脱毛斑に炎症を抑える作用のあるステロイドの塗り薬を直接塗布します。これは、免疫細胞による毛根への攻撃を抑えることを目的とした最も基本的な治療法です。私は、軽症の患者様にはまずこの外用薬を最低3ヶ月間継続していただき、経過を見ることをお勧めしています。
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局所免疫療法(SADBE/DPCP)の保険適用外治療: 軽症から重症まで広く用いられる治療法です。人工的にかぶれ(接触皮膚炎)を起こさせることで、攻撃的な免疫細胞の働きを抑え、毛根を守ろうとする作用を利用します。この治療法は、特に慢性化した患者様に有効性が高いと報告されています。
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ステロイド局所注射: 脱毛斑の中に直接ステロイドを注射する方法です。注射により薬が患部に高濃度で作用するため、早期の改善効果が期待できますが、注射時の痛みが伴うこと、皮膚がへこむ(陥没)副作用の可能性があることを事前にしっかり説明しています。
中等症から重症(SALTスコア21以上)の治療法
脱毛範囲が広い場合は、全身的な作用が期待できる治療法や、新しい機序の治療法が選択肢となります。
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ステロイド内服療法: 炎症や自己免疫反応を強力に抑制するために、ステロイドを短期間内服します。特に急速に進行している重症例に用いることが多いですが、血糖値の上昇や胃腸障害などの副作用も考慮し、慎重に実施する必要があります。患者様には、この治療を行う際には、血糖値などの定期的な血液検査も同時に実施することを説明し、副作用のモニタリングを徹底しています。
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JAK阻害薬(内服薬): これは近年開発された最も注目されている治療薬です。円形性脱毛症の自己免疫反応に関わる特定の情報伝達経路(JAK経路)を阻害することで、免疫細胞の誤作動を根本的に抑えます。特に重症例に対して高い発毛効果が報告されており、日本でも複数の薬剤が保険適用となっています。この薬は副作用のリスクもあるため、円形性脱毛症の治療経験が豊富な皮膚科専門医の下で、定期的な採血による厳重な管理が必要です。
日常生活でできる円形性脱毛症への対処法と注意点
治療はもちろん大切ですが、日常生活における工夫やケアも円形性脱毛症の治療効果を高める上で非常に重要です。
ストレス管理と生活習慣の改善
円形性脱毛症は、ストレスがきっかけとなり得ることが多いため、心身のバランスを整えることが大切です。
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十分な睡眠の確保: 免疫システムの調整には、質の良い睡眠が不可欠です。毎日6時間以上、できるだけ決まった時間に就寝・起床する習慣をつけましょう。
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適度な運動: 週に3回、30分程度のウォーキングなどの有酸素運動は、ストレス解消と自律神経の安定に役立ちます。運動は身体的な疲労回復にもつながり、治療の効果を間接的に高めます。
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食生活の見直し: バランスの取れた食事が基本ですが、特にタンパク質、ビタミンB群、亜鉛などのミネラルは髪の毛の成長に必要な栄養素です。極端なダイエットや偏食は避け、体調を整えることが重要です。
髪の毛のケアとカバー方法
脱毛斑に対する物理的な刺激を避け、精神的な負担を減らすための対処も大切です。
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シャンプーとブラッシング: シャンプーの際は、爪を立てずに指の腹で優しく洗い、頭皮を傷つけないようにしてください。ブラッシングは毛先から優しく行い、過度な力を加えて髪を引っ張らないように注意しましょう。
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帽子やウィッグの活用: 脱毛斑が気になる場合は、帽子やバンダナ、部分ウィッグなどを利用して心理的な負担を軽減することも治療の一環です。特にウィッグは技術が進歩しており、自然な見た目で生活の質(QOL)を大きく改善してくれます。高知市の島崎クリニックでは、必要に応じて専門の業者や支援団体をご紹介することも可能です。
まとめ
円形性脱毛症は、決して珍しい病気ではなく、適切な診断と治療を受けることで多くの場合、発毛が期待できる皮膚疾患です。円形性脱毛症の原因は自己免疫の異常であり、治療の目的はこの過剰な免疫反応を抑えることにあります。
治療法は、軽症であればステロイド外用、重症であればJAK阻害薬の内服やステロイド全身投与など、重症度(SALTスコア)に応じて選択されます。また、日々のストレス管理や規則正しい生活習慣も治療効果を高める重要な要素です。
円形性脱毛症は、見た目の問題から精神的な負担が大きい病気ですが、一人で悩まずに皮膚科専門医に相談することが、治療への第一歩です。
本記事をお読みいただきありがとうございます。何かご不明な点や、お悩みがございましたら、高知市の島崎クリニックにお気軽にご相談ください。
